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電磁気学入門

電磁力について

前回は電磁場の存在を力によって知ることができることを述べました。
それでは具体的にどのような力によって、何が分かるのでしょうか。

まず、1メートルの間隔で平行に置かれた2本の電線を考えます。
どちらにも同じ大きさの電流が同じ方向に流れているとき、互いに引き付け合う力 が生じます。その力が電線1メートル当たり、2 x 10-7 ニュートンのとき、この電流の大きさを1アンペアと定義します。
1アンペアの電流が1秒間に運ぶ電気量、つまり電荷を1クーロンと定義します。

平行な電線内に働く力

電荷の受ける力によって電場や磁場の存在が分かるわけですが、電荷の定義によって、電場を定量的に表現することができます。

静止している電荷が力を受ける場合、その力の原因が接触力でもなく重力でもない場合、電場による力であると考えられます。この力が電荷量に比例することが、経験的に知られています。
ところで、力は方向と向き、そして大きさを持った量、つまりベクトルで表されますから電場もベクトルとして、次のように表現することができます。

f = qE          ----- (1)

ここに、f は電荷の受ける力、q は電荷量、そして、E が電場です。
また、太文字で表現されたものは、ベクトルであることを示しています。これより、力の単位をニュートン( N )、電荷の単位をクーロン( C )とすれ ば、電場の単位は( N / C ) となります。

次に、静止している電荷が力を受けない領域を考えます。
この空間では、電場が存在しないだけでなく、接触力も重力も存在しないものと考えられます。ここで、この電荷が運動することによって力を受ける場合、磁場による力であると考えられます。この力が、電荷量および速さに比例すると同時に運動方向に直角に働くことが経験的に知られています。
ところで、速度も方向と向き、そして大きさを持った量で表されますから、磁場もベクトルとして次のように表現することができます。

f = q ( v x B )          ----- (2)

ここに、f は電荷の受ける力、q は電荷量、v は速度、そしてB が磁場です。
この式は、右辺がベクトルの外積の形をしていますので、力が常に速度と直角方向に働くことと、力の大きさが電荷量および速さに比例するという2つの経験的な 事実を同時に表現していることがわかります。ここで、力の単位をニュートン( N )、電荷の単位をクーロン( C )、速度の単位を v ( m / sec )としたとき、磁場の単位テスラ( T )と定義します。

それでは、電場や磁場が同時に存在する領域で、電荷はどのような力を受けるのでしょうか。
この力に関しては、次の事実が経験的に知られています。つまり、電荷の受ける力は、電場や磁場が単独に存在する場合にそれぞれから受ける力を単純に足し合わせたものとなります。
この事実と(1)式、(2)式より電場と磁場が同時に存在する場合の電荷の受ける力は、次のように書くことができます。

f = q ( E + v x B )           ----- (3)

この形の力のことをローレンツ力と云います。

以上をまとめますと、電荷が電場や磁場から受ける力は次の三つの経験的事実、すなわち

  1. 電荷が電場によって受ける力は、電荷量に比例する。
  2. 電荷が磁場によって受ける力は、電荷量および速さに比例すると同時に運動方向に直角に働く。
  3. 電荷の受ける力は、電場や磁場から受ける力を単純に足し合わせたものである。

より(3)式のように表現することができます。 また、この三つの経験的事実をふまえた上で、ローレンツ力の表現を電場と磁場の定義と見ることもできます。

これより電荷の受ける力を測定することによって、電場と磁場を定量的に知ることができることが示されました。
今まで電荷の受ける力を考えてきましたが、電流の受ける力も(3)式より求めることができます。

電流は電荷の流れと見ることができますので、時間的に一定の電流では多くの電荷が電線の中を電流の方向に一定の速度で流れていると考えることができます。電流の大きさは、電線の断面を1秒の間に通過する電荷量として定義されていますので、電線1メートル当たりに含まれる電荷量を q とすれば電流の大きさ i は、 i = qv (アンペア)となります。ここに v は速度の v の大きさ、つまり絶対値です。

断面Aを通過した電荷

電流は電荷の速度と同じ方向と向きをもつので、次のようにベクトルとして書くこともできます。

i = qv          ----- (4)

したがって、1メートル当たりの電線の受ける力は

f = q ( v x B )

 = i x B)        ----- (5)

となります。

ところで、ここでは電流の受ける力として磁場だけ考えていますが、電流は電荷の流れとして説明していますから、当然のことながら電場から力を受けるように思わ れます。
しかし、ここでは電線は常に電気的に中性であると考えています。
すなわち、電線の1メートル当たりの電荷の量をqとしましたが、ここでは正の電 荷量を q / 2として、負の電荷量を-q / 2として、正の電荷は電流と同じ向きの速度、負の電荷は電流と逆向きの速度を持つものとします。
すると(4)式は

i = q/2 v + ( - q/2 ) ( - v ) = qv

と書けますので、磁場から受ける力はやはり(5)式となります。

これからは電流といった場合、このように電気的に中性な電流を考えることにします。

正電荷と負電荷

この節の最初に、電流値を定義するのに平行な電線の間の力を使いましたが、これまでの議論からこの力について次のように考えることができます。

つまり、一方の電線を流れる電流がもう一方の電線の位置に磁場を作り、そこを流れる電流がこの磁場により(5)式で表現される力を受けるということです。
すなわち、電流は磁場によって力を受けるだけでなく、磁場を発生させる源になっているということです。

同じように電荷も電場によって力を受けるだけでなく、電場を発生させる源でもあります。

次回は、電荷や電流がどのように電場や磁場を発生させるかについて議論したいと思います。

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