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高周波誘電加熱解析

高周波誘電加熱は誘電損失(tanδ (タンデルタ))を応用した加熱方法で、誘電体に高周波電界を加えた時、そのエネルギーの一部が誘電体内部で熱となって失われる現象を利用しています。

下図1のような構造体(例えばコンデンサ)では、下図2のような理想的なコンデサであれば交流電圧を印加した場合、電流の位相は90度進みますから、コンデンサ内の損失電力は無く、結果発熱も生じません。

しかし実際の誘電体で加えた電界が時間的に変化した場合、下図3のように誘電体の抵抗成分によってリーク電流(IR)が発生し、電流の位相は δ だけ遅れます。この δ は損失角と呼ばれ、損失角 δ の正接は誘導正接 tanδ (タンデルタ)と呼ばれます。

結果、電流の位相差は90度からずれ、誘電体の抵抗は無限大ではなく有限となり、図4のようにリーク電流(IR)が発生して発熱します(誘電損失)。



図1


図2

図3


図4

高周波誘電加熱装置の身近な例としては、高周波溶融接着装置があります

高周波溶融接着装置

高周波誘電加熱連成解析

この装置の溶融加工の仕組みは、「高周波誘電加熱」です。
誘電体(PVC)に高周波電界を加えて誘電体内部の分子を激しく振動させ、その時の分子運動によって発生する誘電体内部からの発熱(内部加熱)で接合面を溶かし、繋ぎ合わせます。

この高周波溶融接着装置を最適に設計するためには、モデル全体の発熱密度分布と温度分布を解析(シミュレーション)ソフトウェアで確認しながら行うと便利です。シミュレーションでは、装置部材の形状寸法を自由自在に設定できますので、可能な範囲で最適な設計を行なうことができます。

高周波誘電加熱解析では、まず発熱密度分布を求めます。
電界解析ソフトウェア[ F-VOLT ]の周波数応答解析機能を使用します。

磁界解析ソフトウェア[ F-VOLT ]につきましてはこちらへ

解析は下図のように、[ 比誘電率 ]と[ 誘電正接( tanδ)]を定義し、さらに周波数を設定して行います。

次に必要に応じて熱伝導解析を行い、時間とともに変化する温度分布を求めます。
これは誘電加熱連成解析と呼ばれます。

[ F-VOLT wih Nastran ]は[F-VOLT]と[ Simcenter Femap with Nastran ]を組み合わせた製品です。

[ Simcenter Femap with Nastran ]は、物体表面の自然対流による放熱を考慮できますので、時間とともに変化する解析対象物の正確な温度変化を解析することができます。
下のグラフは解析対象物の表面の自然対流境界条件で、上面、下面、側面の温度と熱伝達率の関係を示しており、正確に温度依存性を考慮できます。

自然対流境界条件

お互いに関連づけながら行ないますので、この操作性の良し悪しが大きなポイントとなります。

この高周波誘電発熱シミュレーションでは、装置部材の形状寸法を自在に設定し、生じる現象を可視化できます。 したがって、実験試作では計測できなかった箇所の温度分布も把握できます。

ここで[ F-VOLT with Nastran ]による高周波誘電加熱解析の一例を紹介します。
下図のようなモデルを想定します。

誘電加熱用モデル (誘電加熱/熱伝導連成解析)

高周波誘電加熱連成解析は以下のステップで解析を行ないます。
①[ F-VOLT ]による周波数応答解析で、発熱密度(誘電発熱)を求めます。
②[ Nastran ]で発熱密度データを基に熱伝導解析を行ない、時々刻々変化する温度分布を求めます。



電界分布コンター図 (単位:V/m)


Z方向中央部のXY断面)



発熱密度分布コンター図 (単位:W/m3)


[ナイロン] のみ表示 (中央部のXY断面)

ここまでは[F-VOLT]を使用して誘電発熱(誘電損発熱)を求めました。

次に、同じ[ Simcenter Femap ] 上の[Nastran]で熱伝導解析を行ない、温度分布を求めます。

 

温度分布コンター図 (単位:℃)
 

[ナイロン] のみ表示 (中央部のXY断面)

下図のような[セクションカット機能]により、解析対象モデルの任意の断面の計算結果を確認できます。
したがって今回のモデルの場合、ナイロンあるいはテフロンの任意の断面の温度分布を確認できますので、温度計測がむずかしい物質内部の温度も、解析結果として確認できます。
最初に1個の断面のコンター図です。断面は任意の位置/角度で定義できます。下図は斜めの面上のコンター図の例です。

     


モデル全体の温度分布コンター図 (単位:℃)


断面の温度分布コンター図 (単位:℃)

次に、等間隔になりますが、複数の断面上にコンター図が作成できます。

     


モデル全体の温度分布コンター図 (単位:℃)


複数の断面の温度分布コンター図 (単位:℃)

また最大3面まで、任意の断面上にコンター図が作成できます。

     


モデル全体の温度分布コンター図 (単位:℃)


断面の温度分布コンター図 (単位:℃)

解析事例

高周波誘電加熱解析事例 (ハーフモデル)

高周波誘電加熱解析事例 (ハーフモデル)
高周波誘電加熱解析事例 (フルモデル)

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高周波誘電加熱連成解析
高周波溶融接着装置

高周波誘電加熱連成解析

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