RFIDカードの近傍に金属が設置されていた場合、外部一次コイルによってカード 内の回路に発生する起電力は、金属からの減磁効果により著しく低下します。
この減磁効果を抑えるためカード表面に磁性シートを装着した場合、起電力にどのような変化が生じるかPHOTO-EDDYjωで解析を行いました。
今回の解析モデルの概要図は下記図1~6の通りです。
図1:RFID カードの断面図 |
図2:RFID カードの回路(※) |
図3:RFID カードの回路(※) |
図4:RFID カードの全体(※) |
※ 回路は閉じた導線として簡易化しています。
図5:金属とRFID カード |
図6:金属とRFID カード(断面図) |
一般的にはRFIDカードがリーダ・ライタの方向に移動しますが、今回は解析を容易にするために、RFIDカードに対してリーダ・ライタ側の一次コイルが並進すると仮定し、各位置で回路に発生する起電力を計算しました。
この時、各時刻でRFIDカードと一次コイルの相対的な位置が変化してしまうため、位置毎にメッシュを作成する必要がありますが、外場機能を利用することで、一次コイルとRFIDカードのメッシュを別々に作成しても(節点を共有していなくても)計算が可能です。これによりメッシュを何度も作成する手間を省くことができます。
なお、外場機能につきましては技術情報のコーナーで詳しくご紹介しておりますので、そちらをご覧ください。
一次コイルとRFID カードの位置関係は図7の通りです。
図7:一次コイルとRFID カードの位置関係
リーダ・ライタ側の一次コイルの初期位置をRFIDカードの中心位置からX方向に[-1.05m]の位置に配置します。
リーダ・ライタ側の一次コイルは[+15cm/sec]の速度で移動させ、RFIDカードの中心位置まで1秒間隔で7秒間の解析を行いました。
比較のため以下3パターンについて解析を行いました。
ケース1 : カード近傍に金属無し、磁性体シートが無しの場合
ケース2 : カード近傍に金属有り、磁性体シートが無しの場合
ケース3 : カード近傍に金属有り、磁性体シートが有りの場合
リーダ・ライタ側の一次コイルには、周波数[13.56MHz] の[50mA]の電流を入力しました。
解析結果は図8~9のようになりました。 今回は周波数応答解析を行っていますので、実部は t = 0(入力と同相)の時、虚部は t = -T/4の時の計算結果を表しています。 |
図8: RFID カード回路に発生する起電力(実部)のグラフ |
図9: RFID カード回路に発生する起電力(虚部)のグラフ |
ケース1に比べ、ケース2およびケース3の誘導起電力は、近傍の金属の減磁効果により著しく低下していることがわかります。
しかし、ケース3では磁性シートを装着することにより、金属側からの渦電流による磁束線を磁性シートが吸収するため、ケース2に比べ、実部で[1.64倍]、虚部で[1.37倍]の誘導起電力を求めることができました。
今回は外場機能を用いることにより、一次コイルの位置変更や、電流、周波数、RFIDの物性値等の変更作業が簡単にでき、繰り返し必要な再計算の手間をかなり省くことができました。
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