まず、次のベクトルの恒等式から始めます。
・・・ (18)
この式は単なる数学的な恒等式ですからなんの物理的意味も持っていません。
この式の右辺にマックスウェルの方程式(1)、(3)式を代入すると、
となるので(18)式は次のように変形できます。
・・・ (19)
今、物質の存在しない領域を考えると、この式は次のように書くことができます。
・・・ (20)
この式は一つの保存則を表しており、
・・・ (21)
の時間変化が、右辺の第一項および第二項で変化することを示しています。
右辺第一項は、単位体積あたりの電磁場が電流に与える単位体積あたりのエネルギー、つまり電磁場のエネルギー変化なので、(21)式 U は、真空中における単位体積当たりの電磁場のエネルギーと見ることができます。
次に電流も存在しない領域 V で(20)式を空間積分すれば
となります。ここで空間積分と時間積分が交換できることと、ガウスの発散定理を使うと上の式は次のようになります。
ここで、Sは領域V の境界面であり、nはこの境界面に外向きにとった単位法線ベクトルです。
この式の右辺の積分は、単位時間当たりにこの領域Vから境界面Sを通って出て行くエネルギーを表しています。したがって、
・・・ (22)
は、単位面積当たりを単位時間当たりに通過する電磁場のエネルギーを表していることになります。
このように考えると、(19)式は、物質がある場合においても電磁場のエネルギーに関する保存法則を表していることになります。
(19)式の左辺を(5)、(6)式を使って真空の場合と同様に書き直すと、
となりますので、真空中に貯えられている電磁場のエネルギーUを使うと(19)式は、次のようになります。
・・・ (23)
物質の存在により、右辺第二項と第三項が追加されたので、これらの項は電磁場が単位時間に物質に与えるエネルギーとして解釈することができます。
この式が、電磁場のエネルギー保存の法則を表していることになります。